障害手当金の時効

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障害手当金の時効についてお問い合わせをいただきました。

障害手当金の時効は「支給すべき事由が生じた日から5年を経過したとき」です(厚生年金保険法第92条)。5年以上過ぎてから請求しても、時効によって受給する権利が消滅していて、受給することができません。

その5年の起算日である「支給すべき事由が生じた日」とは「傷病の治った日」を指します。

なお、そもそもの障害手当金の支給要件として、初診日から5年以内に治った(症状が固定してそれ以上の医療効果が期待し得ない状態に至った日を含みます)必要があります(厚生年金保険法第52条)。大昔に初診日があって、5年以上の時を経てようやく治った…という場合は該当しません。

結局のところ、障害手当金は、初診日から5年以内に治って、その治った日から5年以内に請求する必要がある、ということになります。

他にも支給要件が色々とあって、例えば、老齢年金など他の年金を受けられるとき(年金たる保険給付の受給権者)は支給できません(厚生年金保険法第56条)。

さて、今回のお問い合わせは、「62歳になって特別支給の老齢厚生年金を受給できることとなり、年金事務所へ行って手続きをしようとしたところ障害手当金の案内があり、62歳の誕生日の前々日までに診断書が出せるかどうかで病院を巻き込んだ大騒ぎとなり、最終的には、請求に必要な書類を年金事務所から渡してもらえないまま62歳の誕生日の前々日を迎えてしまい、モヤモヤが残っているのですが、もうダメなのでしょうか?」というお話でした。

この方は、初診日が20年以上も前にあるようなので、今となってはどう頑張っても障害手当金の支給を受けることはできないはずです。

それが、老齢年金の手続き直前になって大騒ぎになったのは、当初の受付窓口の方が「障害手当金は、老齢年金の受給権が発生すると受けられなくなる」という知識を基に慌てたためではないか… そして、後になって、そもそも時効で消滅していることに気づいて書類を渡さなかったのではないか… と推測しています(あくまでも推測ですが)。

症状固定になってすぐに請求をしていれば受給できたのかもしれないので、その点ではもったいなかったのですが(ただし、過去の法改正を調べていないので、その当時も障害手当金の規定があったかどうかは不明ですが。)、「今回、62歳の前々日までに提出できていれば…!」という訳ではないので、せめてその点のモヤモヤ感は解消してあげた方がよいと思い、改めて調べ直してメールで回答しました。

障害手当金はあまり登場しない給付なので、年金事務所の窓口の方も慌てたのかもしれません。私も、いきなりだと間違った内容で答えてしまいそうで怖いです。

ご本人からは、私からの回答に対して「何の利もない相談への真摯な姿勢に感謝しかないです。」とのお返事を頂きました。

表面的には何の利もないのかもしれませんが、調べ直すことで知識が増強されるので、そういう意味ではありがたいお問い合わせで、利はあるのです。

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