「AIが『認められる』と言っていた」と言われても

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社労士の意見を聞きたい…とのお電話を頂きました。

「今から15年ほど前、障害年金を請求して10年遡及しての認定日請求が認められました。それからずっと障害年金を受給し続けています。だけど、あの時、時効消滅のために受け取れなかった部分があったんです。その時効消滅分を支給するよう訴える準備を進めています。でも、弁護士、行政書士、社労士、色々な人に聞いてみましたが、みんな無理っていうんです。」

お気持ちはよく分かりますが、訴えても、残念ながら支給されないと思います。

「障害年金が受給できることを、誰も教えてくれなかったんです。病院は、手帳のことは教えてくれましたけど年金のことは教えてくれませんでした。手帳の受付をした市役所の人も教えてくれませんでした。保険金の手続きをした生命保険会社の人も教えてくれませんでした。だから、障害年金の請求が遅れたことに、私には非はないんです。」

きっとそうだろうと思います。でも、訴えても、時効消滅分の支給は受けられないと思います。

年金の受給権(年金を受け取る権利)自体は時間がたっただけでは消えません(注:別の理由で消滅することはあります)。しかし、支分権(年金を2か月に1回受け取る権利)は5年で消えてしまうことになっています。

時効について、おかしいと思う気持ちもありますが、現行法上はそういう決まりになっています。

それを覆すことは容易なことではありません。

なお、決定に納得がいかない場合は、不服申し立てをして審査を受ける権利はあります。

ただし、申し立てには期限があります。期限については支給決定通知書に(小さな字ですが)書いてあります。通知を受け取ってから3か月以内です(注:昔は60日以内でした)。

「それは知っていました。その当時も弁護士さんに相談しました。でも、それは行政法の案件で非常に難しいと言われて、それで不服申し立てはあきらめていたんです。」

期限を過ぎてしまったことで、不服申し立てをする権利を自ら放棄してしまったことになるんです。

「いえ、それは放棄ではないんです。あきらめただけなんです。」

お気持ちとしては放棄したつもりはないと思いますが、放棄とみなされてしまうと思います。

支給を受けるには、不服申し立ての期限と時効、二つの不合理性を訴えることになります。二重の壁があります。それを覆すのはほぼ不可能だと思います。

「でも、AIに聞くと、質問の仕方を変えて色々と聞いてみても、『認められる』っていう回答が出てくるんです。

AIよ… ヘンな期待を持たせないであげてください。

訴えをおこすことは、時に必要です。

だれも声を上げなければ、「だれも不満を抱いていない。みな納得している。」・・・そういうことになってしまいます。

そうではないんだ、納得はしていないんだ、ということを伝えるためにも、訴えをおこすことに意味はあります。

言い方を変えれば、後に続く人たちのために、社会的な意味はあると思います。

しかし、今回あなたの訴えについて認められるかどうかは別の問題です。

こうして、AIだけでなく、専門家の意見も聞いてみようとしてくれたことはよかったと思います。

望んだ方向でのお答えはできませんが。

時代は進歩しましたが、障害年金の周知はまだまだ不十分です。

年金の専門家として、周知ももっと頑張らなきゃな・・・

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